園医から
※子どもたちの健やかな成長を願って!
2025年8月・9月合併号
理事長・園医 赤坂 徹
1.子どもの視力と視覚について
1)視力の現状と対処法
視力とは片眼ずつ測定される対象そのものを見る力のことで、
文部科学省の2022年度学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0未満の
小学生は37.88%、中学生は61.23%だった。
国立成育医療研究センター眼科医員の吉田朋世さんは「スマホ画面など近くの
物ばかりを凝視(ぎょうし)する生活が続くと、眼軸(がんじく)(眼球の奥行)が過度に伸びて遠くの物にピントが合わなくなる」近視状態となり、学童期に進行しやすい。子どもがスマホやタブレットを利用する際は、眼と画面の間を30センチ以上離すように心がける。定期的に眼を休ませる目安は、30分に1回、6メートル先を20秒以上見る事である。
2)視覚の現状と対処法
視覚機能とは両眼で対象を正確に捉え、それに伴う身体の動作を正確に脳に伝える力のことで、視力とは異なるものである。
去る7月30日青森県弘前市で開催された日本聖公会東北地区保育連盟第51回保育者大会でトータルビジョントレーニング協会の千葉敦子さんが「子どもの発達と視覚の関係性」と題して、視力と視覚の違いを理解して、子どもの困りごとの原因を探ることができる。
それは能力不足、努力不足ではありません。
□ 本を読むときに行を飛ばしたり同じ所を何度さも読んだりする。
□ 視力が良いのに書き写すのが遅い。行からはみ出す。字が汚い。
□ 運動や球技が苦手である。
□ 手先が不器用であす。
□ 集中力がない。落ち着きがない。
□ よく転んだり、ぶつかったりする。
□ 初めての場所や初めてのことの切り替えが苦手である。
□ 階段の昇り降りやエスカレータ―二乗るのが苦手である。
□ 家族や周りの人とのコミュニケーションが苦手である。
□ 記憶量、理解力に自信が持てない。
スポーツ、教育や子どもの発達支援などの場で、視覚機能を鍛えるための訓練としてビジョン・トレーニングという言葉が知られてきている。ビジョン・トレーニングに加えて、メンタル・トレーニング、右脳トレーニング、コーデイネーション・トレーニングなどが発達や成長に全て必要なものである。
2.災害は忘れた頃に、だから忘れずに備えましょう
暑い夏が続きます。地震、津波、山林火災などの災害、酷暑、竜巻、ゲリラ豪雨、台風などの気象変動、熊、猪、鹿などの動物による事故などが自宅、幼稚園や外出先で起こっています。私達が東日本大震災で学んだことを生かして対応しましょう。
1)災害への対策
①地震
大きな揺れを感じたら、丈夫なテーブルや机の下に入り、窓や棚から離れ、頭をヘルメットで覆って自分の身を守る。緊急地震速報が出たらドアを開けて出口を確保し、速やかに安全な場所に移動する。
②津波
地震に伴う津波には波が届かないような高い場所や建物に移動する。それに伴って電気、水道、都市ガス、自動車の燃料の供給が止まることが予測される。停電になったら、外出時にはブレーカーを切っておく(復旧した炊事用具から引火して火事が起こらないように)。
③山林火災
乾燥しているとき、小さな焚火から引火して山火事になり、消火に手間取った。火の大きさ、風向きを見て避難所に向かう。
2)気象変動への対策
①熱中症
暑い日に車中に置いておかれたり、炎天下で長時間スポーツをすることによってめまい、頭痛、腹痛、嘔吐、だるさを訴える、対応が遅れると意識を失ったり、死に至ることもある。
帽子をかぶり、涼しい服を着せる。睡眠不足や体調不良の時、炎天下での運動を避ける。冷房をつけた状態でもお子さんを車の中に残さない。ベビーカーは地面からの照り返しが強いので、大人が感じるよりも体温が上がりやすい。汗で失われた水分と塩分を補給しなければならない。バランスが取れた補給が必要な場合、脱水を治療するためのイオン飲料(補水液)が利用できる。これらの対応で回復しなければ医療機関、緊急時は救急車で受診する。
②落雷への対策
雷鳴が始まったら広場から家屋がある所に移動し、落雷にあったら、急いで車内や家屋内に避難する。感電した場合、救急車で受診する。
③竜巻
テントや物置などが飛ばされるほどの突風が吹く竜巻は発生場所や時刻を予測することが難しい。竜巻が近づいてきたら、室内に避難し1階の窓がないか小さい部屋に移動する。
④ゲリラ豪雨・台風
夏に発生するゲリラ豪雨は自宅や園舎・園庭に浸水を引き起こし、通園路の冠水や河川や側溝の増水などが見られる。増水した場所に近づかないように、安全な室内に避難する。早めに帰宅するか、園内に待機するかなどの状況判断は気象状況を見ながら行う。
3)熊、猪、鹿などの動物による事故への対応
熊や猪が里山や民家に現れ、畑の作物や小屋や台所に保存していた食材を喰い散らしたり、鶏が殺されたり、嚙まれて死傷することがある。食物残渣をきちんと管理し、動物が出現するような場所を一人で歩かない。動物を発見した場合、近寄らずに警察に通報して対処してもらう。
4)非常時に備えるポイント
①非常食、非常用備品を確認しよう。
非常食の賞味期限を確認し、それまでに家族で一緒に消費して、次回の災害対策日までに補充する。電池、カセットコンロ等の買い置きを確認し、自動車の燃料は満タンにしておく。
②家族での確認事項
ⅰ)ハザードマップで避難場所や避難経路を確認
ⅱ)交番や消防署など、頼れる大人がいる施設の場所を確認
ⅲ)ラジオや携帯ライトなどの備蓄品は子どもの手の届く場所に保管
ⅳ)家の中に倒れてくる家具がない「安全な空間」を確保
ⅴ)傷口の応急処置の方法を説明
ⅵ)保護者が帰宅できない場合の子どもの預け先を事前に確保