園医から

※子どもたちの健やかな成長を願って!
2024年6月・7月合併号
赤坂 徹

 
 

1.呼吸器症状と消化器症状への取り組みについて
お子さんの呼吸器症状や消化器症状から、受診するタイミングと適切な
対応を考えたいと思います。
 

1)呼吸器症状
①咳、鼻水、鼻づまりは鼻腔、咽頭、気管の上気道の炎症を急性上気道炎(感冒、風邪)と診断され、自宅で経過を見ることが多いと思います。発熱や痰を伴う場合には気管支炎などの呼吸器感染症が考えられます。症状が急激に悪化して眠れなかった、長引く場合には受診して下さい。インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症は感染力が強いので、医療機関を受診して薬物治療に加えて自宅もしくは入院による隔離が必要となります。予防として手洗い、うがいの励行、マスクの着用が勧められます。

☆花粉症:風邪症状にくしゃみ、鼻や眼のかゆみ等の症状が加わるとアレルギーギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎と診断されます。季節的変動があり、2月から4月にはスギ花粉症が見られ、家塵(ハウスダスト)は年間を通じて現れますが、気候変動が大きい時に悪化します。

②喘鳴(ゼイゼイ、ゼロゼロ)、呼吸困難(息苦しい、呼吸が速い)は気管支より狭い下気道の狭窄を伴う気管支喘息、急性細気管支炎、発熱を伴い痰があれば気管支炎や肺炎が考えられ、受診をお勧めします。喘息と診断されていて吸入薬などをお持ちの場合には、医師の指示に従ってお使い下さい。効果がなければ受診して下さい。気道内に異物(食物、殻、骨など)が詰まってしまうと、大きさにより喘鳴、呼吸困難、窒息が見られます。

③胸痛は肺炎、胸膜炎、胸を強打して起こる気胸、過換気症候群などで起こります。受診して必要な検査により診断されます。
 

2)消化器症状
①食欲不振は消化器疾患だけではなく、色々な病気の初期症状として見られます。症状の経過を見て受診を勧めます。

②腹痛、嘔気、嘔吐は便通に関連して現れます。腸の動きが激しい下痢では嘔気、嘔吐に伴って腹部膨満、腹痛が起こります。食欲不振、脱水状態、発熱、粘血便を伴うようであれば、感染性胃腸炎が考えられますので受診しましょう。このような症状は後述する食中毒にも見られます。同じ食品を摂取して複数の人から同様の症状がみられると、感染症や食中毒の可能性があります。新鮮な食品をよく洗い加熱を十分に行います。排泄後、調理前と食前には手をしっかり洗いましょう。下痢、嘔吐などの消化器症状があったり、手に傷がある場合は調理しないことです。吐物や便の処理をする場合、マスク、手袋、エプロンを装着し、ペーパータオルなどで外側からふき取り、消毒し、使用したものはポリ袋に密閉して破棄します。衣類は塩素系消毒薬か熱湯で消毒するか破棄します。

③腸に便が詰まっている場合(便秘など)でも食欲低下、嘔気、嘔吐、腹部膨満、腹痛が現れます。長期間持続する慢性便秘では、診断と治療のために受診しましょう。

④食物アレルギー、アナフィラキシーは特定の食物を食べてから20~30分以内に、発赤、痒み、蕁麻疹のような皮膚症状、口唇、口腔粘膜、眼の周囲の腫れのような粘症状、咳き込みや喘鳴のような呼吸器症状、吐き気、腹痛、下痢のような消化器症状、血圧低下、不整脈のような循環器症状が出現することがあります。緊急時のためのエピネフリン筋注(エピペン)を使用して、救急車で対応可能な医療施設を受診します。
 

2.初夏に多い食中毒について
食中毒と急性胃腸炎は症状だけでは区別できません。同時に複数の子どもが症状を訴えたときには食中毒を念頭に置きます。自分の判断で薬を使わずに、安静を保ちながら、医療機関を受診させます。
食中毒は食中毒を起こす細菌、ウイルス、有毒な物質がついた食品を摂取することにより、下痢(水様便、粘血便)、腹痛、嘔気、嘔吐、発熱などの症状が出る状態です。気温が高く細菌が育ちやすい6月から9月に多く見られます。代表的な病原体による侵入経路と発症までの時間を示します。

病原体 侵入経路(汚染された食品) 食後からの時間
サルモネラ菌 生卵、オムレツ、牛肉のたたき、レバ刺し 6~48時間
黄色ブドウ球菌 おにぎり、弁当、巻きずし、調理パン 30分~6時間
腸炎ビブリオ菌 刺身、すし 4から96時間
カンピロバクター  半生焼き鳥、洗わない野菜、井戸水や湧き水  2~7日
病原性大腸菌※ 半生焼肉、洗わない野菜、井戸水や湧き水 12~60時間
ノロウイルス 加熱不十分のカキ、アサリ、シジミ 1~2日

※病原性大腸菌(腸管出血性大腸菌)