園医から

※子どもたちの健やかな成長を願って!
2024年5月臨時号
赤坂 徹

 
 

【臨時で発行します!】

お子さんの症状から病名を推測したり、適切な対応を考えたいと思います。
◇今回は皮膚(ひふ)に現れる発疹(ほっしん)についてまとめてみました。
次回は呼吸器症状や消化器症状についてお話します。
 

子どもの発疹

皮膚に現れる発疹には皮膚単独と発熱やかゆみを伴う身体全体の病気の一部として現れる場合がある。病名や症状に漢字が多いので、ふりがなを付け、( )内に一般名を記入した。
発疹には大きさが同じもの、大小不同のもの、その部位、季節性があって夏に向けて増えるもの、感染がない状態から細菌が侵入してジクジクして膿(うみ)が出てきて、痂疲(かひ)(かさぶた)できるもの、家族などの集団の中で細菌やウイルスなどによって流行するものがある。
皮膚の状態だけで診断が難しい場合には小児科医を受診してほしい。
 

1.小さな発疹(丘疹(きゅうしん))ができるもの

1)汗疹(かんしん)(あせも)
汗の出口がふさがれて炎症が起こったもので、ひたいや首の周り、胸、背中などの汗の出やすい所に多く見られる。

2)溶連(ようれん)菌(きん)感染症(かんせんしょう)(猩(しょう)紅熱(こうねつ))
溶連菌という細菌がのどに感染して、のどの痛み、発熱、身体や手足に小さな赤い発疹が密集して現れる。赤い発疹が猿(猩)の尻のように見えるので猩紅熱と呼ばれていた。
のどの粘膜が真っ赤になり、舌が苺のようなぶつぶつが出たり、首のリンパ腺が腫れることがある。

3)風疹(ふうしん)(三日ばしか)
風疹ウイルスによりうつってから2~3週間後に赤い小さな発疹が体中に出る。発熱は全くないか3日間高熱が出ることもある。
3日間で治るので三日ばしかと呼ばれるが、大人がかかると症状が強く出る。

4)伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)(水いぼ)
丸く光ったうつるイボで、痛みもかゆみもない。つぶすと白いかたまりが出てくる。この中にウイルスがたくさん含まれていて接触するとうつる。
 

2.少し大きな発疹ができるもの

1)麻疹(ましん)(はしか)
麻疹ウイルスにより初めの2~3日は発熱、咳、鼻水、目やにが出る。
一旦熱が下がると同時に全身に少し大きな発疹が出て、3~4日間高熱が続く。大人がかかると症状が強く出る。

2)伝染性(でんせんせい)紅斑(こうはん)(りんご病)
ほっぺがりんごのように赤くなるのでリンゴ病と呼ばれる。太ももや腕に赤い斑点やまだら模様が出来る。ほほがほてったり少しかゆくなることもある。

3)蕁麻疹
蚊に刺された時のように皮膚がモコモコと盛り上がり、形も大きさも色々でとてもかゆがる。
食物アレルギー、薬品アレルギー、動物、植物、化粧品、寒さ、感染などたくさんの原因がある。急に発現して1時間位で消失することが多い。

4)アトピー性皮膚炎
アレルギー疾患の家族歴があると、乳幼児期からかゆみを伴った乾燥肌(カサカサ肌)が顔面に認められる。それ以降は頸部(けいぶ)、肘(ひじ)、膝(ひざ)、腰(こし)に拡大する。
感染を伴うと、ジクジクした膿痂疹(のうかしん)(とびひ)となって感染部位が大きくなる。
 

3.膿疱(のうほう)、膿(うみ)を伴うもの

1)多発性(たはつせい)汗腺(かんせん)膿瘍(のうよう)(あせものより)
汗の出口にブドウ球菌が侵入して、乳幼児の頭部、背部、胸部、臀部(でんぶ)に丘疹(きゅうしん)(小さな発疹)、膿疱(のうほう)(膿を持つ発疹)、紅色結節(赤い硬い発疹)、膿瘍(のうよう)(膿を持つ大きな発疹)を形成する。大きくなると周辺のリンパ節が腫れて発疹に発赤、圧痛を伴うことがある。

2)膿痂疹(のうかしん)(とびひ)
擦(す)り傷や虫刺され、あせも、湿疹などに化膿菌が入り込んで、水ぶくれができる。これをかきこわした手で他の場所をかくと、そこに水ふくれが「とびび」する。夏に多い病気である。
膿疱が広がっていくと火傷のようになって入院治療が必要になる場合がある。
 

4.水疱(すいほう)(水ふくれ)を伴うもの

1)手足口病
ウイルスより手のひら、足のうら、口の中に小さな水ぶくれが出来るが、臀部や膝にできることもある。
高熱がでることもあり、手足の水ぶくれは痛みがなく、口の中の痛みで食欲が減退することもある。

2)水痘(すいとう)(みずぼうそう)
水痘ウイルスによる感染症である。水を持った赤くかゆみを持った発疹が、口の中から陰部、頭皮(とうひ)の中まで全身に出る。
発疹は2~3日でピークになり、その後に乾いて黒い痂疲(かひ)(かさぶた)になる。1週間位で症状が改善する。

3)帯状疱疹(たいじょうほうしん)
みずほうそうに一度罹ったことのある子が何年かたって再発したものが帯状疱疹である。同じ水痘ウイルスであってもかゆみではなく痛みを感じる。
小さな水ぶくれが背中から胸まで肋骨に沿って帯状に出来るが、顔や腰に出来ることもある。
 

参考図書
1.日本外来小児科学会編著、お母さんに伝えたい子どもの病気ホームケアガイド第4版、医歯薬出版(株)、東京2013
2.末廣豊、宮地良樹:小児の皮膚トラブルFAQ、(株)診断と治療社、東京2008

 
 


 
 

※子どもたちの健やかな成長を願って!
2024年4月・2024年5月合併号
赤坂 徹

 
 

4月になって聖パウロ幼稚園で進級されたお子様、
新たに入園されたお子様と保護者の皆様、大変おめでとうございます。
私は園医(小児科医)で理事長を務めており、5月2日(木)には幼稚園で小児科健診を予定しております。
お子さんの心身の健康問題の解説を隔月に「園医だより」としてホームページに掲載しております。重要なものは反復して取り上げていることをご了承ください。
年間6回(6月、7月、9月、11月、2月)ですが、個別の「子育て相談」を実施しております。
何でもよろしいのですが、ご相談がありましたら、園長もしくは教頭にお申し出ください。
新型コロナウイルス感染症、インフルエンザなどの呼吸器感染症は3密を防いで消毒や換気など、私達ができることで備えましょう。
 

1.自律神経の役割

心臓、肺臓、胃腸などは自分の意識によらず自動的に自律神経(交感神経、副交感神経)
のバランスで動いています。物を取りたいと思って手を動かすような神経と筋肉の動きとは異なります。春に思春期の子どもに多く認められる自律神経失調症、起立性調節障害は幼児には認められませんが、春先や新学期の忙しい時期に発症することが多いようです。
起立性調節障害には立ちくらみ、めまい、悪心、頭痛、意識障害、朝起きられないなどの一連の症状が認められます。単なる血圧維持機構の機能不全だけではなく、自律神経系や内分泌系の複雑な機能異常が考えられ、心身医学的視点が必要となります。安静横臥位から立ち上がった時の収縮期血圧の低下、脈圧(収縮期と拡張期の血圧差)の狭小、脈拍の増加が診断に役立ちます。規則正しい生活(早寝・早起き・朝ご飯)が基本ですが、効果が不十分な場合には薬物治療を併用します。かかりつけの小児科医にご相談下さい。
 

2.新しい環境に慣れること

1)規則正しい生活
新入園や進級したお子さんは新しい環境に慣れずに疲れてくるのがこの時期です。のんびり家庭で過ごしていたのが、朝起きて朝食を食べて登園の準備をするという生活の枠組みが造られてきます。朝起きられるように十分な睡眠時間を確保しましょう。規則正しい生活をすることは自律神経のバランスと生活リズムを作るために重要です。家庭での生活に幼稚園のスケジュールが加わってこれに慣れるまで時間がかかります。焦らず温かく見守っていただきたいと思います。

2)家庭での役割分担
お子さんにあった簡単な家事を担当させ、よくできたとほめましょう。家族の中で自分が役に立っていることが判れば自信につながります。

3)満足することを知る
欲しいものがすぐに手に入ると我慢(がまん)ができなくなります。お子さんにふさわしい物であれば、お誕生日のように期限を約束して購入するようにします。お子さんを取り巻く両親や 祖父母と共通した対応が望まれます。

4)入学までに予防接種を受けたかどうかを母子手帳で確認して、受けておきましょう。

5)虫歯の治療は完了していますか。軽いうちに歯科医で治して、歯磨きも良い習慣です。近視・遠視などの視力障害があれば眼科医を受診しておきましょう。
 

3.子どもの事故は5月に多発する

日本スポーツ振興センターは幼稚園や保育園での事故が5月に増えると報告しました。新しい環境に慣れ、暖かくなって活発になったことが原因と考えられているようです。けがの部位として頭と顔で8割、腕が2割を占め、場所としてすべり台が最も多く、複数の遊具が組み合わされた総合遊具、アスレチックがこれに次いで多いようです。家庭や近所の遊園地でも危険な場所があるかもしれません。外で遊ぶなということではありません。安全に遊べる環境作りと、お子さんが危険を回避できる身体の訓練が必要と思われます。運動嫌いのお子さんに事故が多いことも確かなようです。
 

4.2024年(令和6年)から始まる5歳児健診と子育て支援について

令和6年から5歳児健診への公的補助が始まりました。小学校入学に備えて発達のバランスが悪く日常生活で困難さが気になることがあります。この状態を発達障害(発達障がい)、最近では神経発達症と呼ばれています。2022年の文部科学省による調査で、公立小中学校の通常学級に注意欠陥多動症などの発達障がいのある児童生徒が8.8%在籍していると報告されました。その対応策について考えてみましょう。

1)子育てをしている時に気になることはありませんか。

①コミュニケーションや表現がうまくできない。②外出先や公園などで忙しく走り回る。③大人などの身振りのまねをしない。④大人が相手になっても喜ばない。⑤自分の好きなものがあると、他への切り替えができない。⑥“ごっこ”遊びができない。⑦身の回りのこと(着脱、排泄、片付けなど)がなかなか身につかない。⑧特定の物に執着する。⑨物音、振動、光などに敏感(感覚過敏)で必要以上に怖がる。

2)発達障がいが心配になったら一人で悩まないで、幼稚園や専門機関に相談しましょう。子どもの気持ちに寄り添って対応します。⇒は対応例です。

①特定のものに興味が強い場合⇒子どもの安心感を尊重しながら、ゆっくりと関心をひろげよう。
②いつもと違うことに戸惑う場合⇒予定の変更は事前に繰り返し伝えておこう。
③活動の切り替えに苦手な場合⇒活動を分かりやすく、絵を使って伝えよう。
④生活の習慣づけが苦手な場合⇒声かけでは記憶に残らないので、習慣づけしたい事柄を絵に書いてカードにして渡す。できたらたくさん褒(ほ)めよう。
⑤落ち着いていることができない場合⇒静かで落ち着ける環境に移動する。落ち着いて出来るようになったら褒め、出来なくても咎(とが)めない。少しずつ成功体験を増やそう。
⑥好きなものの前ではルールを忘れてしまう場合⇒根気よくルールを身につけさせよう。守れたら褒めよう。