園医から
※子どもたちの健やかな成長を願って!
2023年2月・3月合併号
赤坂 徹
子どもの成長には
発育(身長や体重の増加)と発達(身体の機能の進歩)
のバランスが重要です。
1.発達の遅れはどのようにわかりますか。
5歳(年長)になると家庭以外で過ごす時間が長くなり、集団生活の中で
言語、粗大運動、微細運動、社会性の項目が出来ないと遅れが疑われる場合があります。
[参照:幼稚園保健2014、小児科臨床、67巻増刊号、2014]
[言語]①会話が流暢になる。②2語文を話し、助詞を適切に使う。③好きな食べ物・嫌いな食べ物、幼稚園のクラスの名前、担任の先生の名前、仲良しの友達の名前を言える。④しりとりをする。
[粗大運動]①片足立ちが10秒以上できる。②片足ケンケンが8~12回できる。③スキップやでんぐり返しをする。④ブランコを立ってこぐ。⑤ジャングルジム等の高い所に登る。
[微細運動]①幼稚園の年少児期から丸、年中児期から四角、年長児期から三角をまねて描く。②人物画で目、口、鼻、耳、身体、手、足を描く。③身体の各部の左右がだいたいわかる。
[社会性]①排便が自立する。②排尿のコントロールは夜間については完成していないので、夜尿があっても生理的現象と考えてよい。③衣服の着脱が自分でできる。④食事は箸を使う。⑤食事の後片付けの手伝いなどをする。
2.発達のバランスが悪く日常生活で困難さを感じる状態を発達障害(発達障がい)、最近では神経発達症と呼んでいます。2022年の文部科学省による調査で、公立小中学校の通常学級に注意欠陥多動症などの発達障害のある児童生徒が8.8%在籍していると報告されました。就学前の実態は明らかにされていませんが、対応策について考えてみましょう。
1)子育てをしている時に気になることはありませんか。
[参照:岩手県いわてこども発達支援サポートブック~こどもの成長によりそった子育て~]
①コミュニケーションや表現がうまくできない。②外出先や公園などで忙しく走り回る。③大人などの身振りのまねをしない。④大人が相手になっても喜ばない。⑤自分の好きなものがあると、他への切り替えができない。⑥“ごっこ”遊びができない。⑦身の回りのこと(着脱、排泄、片付けなど)がなかなか身につかない。⑧特定の物に執着する。⑨物音、振動、光なのに敏感(感覚過敏)で必要以上に怖がる。
2)発達障害が心配になったら一人で悩まないで、幼稚園や専門機関に相談しましょう。子どもの気持ちに寄り添って対応⇒は対応例です。
①特定のものに興味が強い場合⇒子どもの安心感を尊重しながら、ゆっくりと関心をひろげよう。
②いつもと違うことに戸惑う場合⇒予定の変更は事前に繰り返し伝えておこう。
③活動の切り替えに苦手な場合⇒活動を分かりやすく、絵を使って伝えよう。
④生活の習慣づけが苦手な場合⇒声かけでは記憶に残らないので、習慣づけしたい事柄を絵に書いてカードにして渡す。できたらたくさん褒めよう。
⑤落ち着いていることができない場合⇒静かで落ち着ける環境に移動する。落ち着いて出来るようになったら褒め、出来なくても咎めない。少しずつ成功体験を増やそう。
⑥好きなものの前ではルールを忘れてしまう場合⇒根気よくルールを身につけさせよう。守れたら褒めよう。
3.新学期への準備について
新型コロナウイルス感染症が世界的に流行して3年を過ぎました。収束の兆しが見られず、子ども達の巣ごもり状態が定着して外遊びができないこと等から、スポーツ庁によると2022年度の全国体力テストで小中学生の体力、ことに持久力の低下が目立っているようです。生活リズムが乱れ、夜にスマホやゲームをすること等で睡眠不足が心配されます。このような時でも卒園、入園(入学)、進級の時期を迎えてお子さんもご家族も楽しみに待たれておられると思います。幼稚園と小学校の違いは何でしょうか。それまで比較的自由に遊んでいたお子さんは授業の時間、教室も決まっていて、皆と一緒に勉強することになります。新しい環境に慣れるために次のようなことで準備しましょう。
1)規則正しい生活
起床時刻を洗面、朝食、排泄、登校時間に合わせて設定し、睡眠時間を十分にとれるように就寝時刻を決めましょう。きちんと食事をとることで排泄(排尿、排便)のリズムもできます。食物アレルギーがあれば、給食での対応や制限の有無が記入された指導表を幼稚園、学校に提出します。好き嫌いがなくなるような準備できると良いですね。
2)家庭での役割分担
お子さんにあった簡単な家事を担当させ、よくできたとほめましょう。家族の中で自分が役に立っていることが判れば自信につながります。
3)満足することを知る
欲しいものがすぐに手に入ると我慢ができなくなります。お子さんにふさわしい物であれば、お誕生日のように期限を約束して購入するようにします。お子さんを取り巻く両親や祖父母とに共通した対応が望まれます。
4)入学までに予防接種を受けたかどうかを母子手帳で確認して、受けておきましょう。
5)虫歯の治療は完了していますか。軽いうちに歯科医で治して、歯磨きも良い習慣です。近視・遠視などの視力障害があれば眼科医を受診しておきましょう。