園医から

※子どもたちの健やかな成長を願って!
2025年4月・5月・6月合併号
赤坂 徹

認定こども園聖パウロ幼稚園へご入園・ご進級おめでとうございます!
4月・5月合併号を3月末に作成する予定でしたが、私が2月末に呼吸器
の手術を受け術後のケア等で掲載できませんでした。
今年の4月から3か月分、4月・5月・6月合併号、7月・8月・9月合併号、
10月・11月・12月合併号、1月・2月・3月合併号でまとめますので、
ご覧いただければ幸いです。緊急の問題が発生した時には臨時号を発行します。

 
1.認定こども園聖パウロ幼稚園での健康管理はどのように実施されているでしょうか

1)健康相談
保護者の皆様からの健康相談を受け付けています。認定こども園聖パウロ幼稚園では「子育て談話室」を開催しています。健康問題や子育てついて園長や園医ご相談がありましたら、教職員を通してご予約下さい。認定こども園聖パウロ幼稚園のホームページに「理事長・園医だより」で健康に関する問題について解説しております。お知りになりたいことがありましたら教職員にお伝え下さい。

2)健康診断
入園時と進級時にお子さんの出生時から入園までの発育・発達、予防接種歴・疾患歴、アレルギー歴(食物アレルギー、動物アレルギーを含む)、生活習慣について、健康調査票に記入していただいております。
定期健康診断は園医により毎年2回実施しております。
①身体発育の評価②脊柱、胸郭、四肢等の骨格系の評価③皮膚の状態の評価④呼吸、循環系の評価⑤言語発達、コミュニケーション力の評価⑥眼、耳鼻咽喉、・歯口腔の評価(各科医師、歯科医師に委ねる)について診察します。

3)感染症の予防
感染拡大防止のために出席停止と臨時休業を決定するのは幼稚園の管理者である園長ですが、園医は助言する立場にあります。発熱、発疹、下痢、嘔吐など感染を疑われる場合はかかりつけ医を受診して、その結果を幼稚園にもお知らせ下さい。

 
2.新しい環境に慣れましょう

入園や進級したお子さんは新しい環境に慣れるために疲れてくるのがこの時期です。
のんびり家庭で過ごしていたのが、朝起きて朝食を食べて登園の準備をするというような枠組みが造られてきます。朝起きられるように十分な睡眠時間を確保するために、年齢に応じた就寝時刻が決められてきます。スケジュールに乗って生活することは生活リズムを作るため重要です。認定こども園聖パウロ幼稚園ではお友達や先生と楽しく過ごすことができますが、それに慣れるまでちょっと時間がかかることをご理解いただいて、焦らず温かく見守っていただきたいと思います。

 
3.子どもの事故は春先に注意しましょう

日本スポーツ振興センターは幼稚園や保育園での事故が5月に増えると報告しました。
新しい環境に慣れ、暖かくなって活発になったことが原因と考えられているようです。
 
1)傷害の発生場所
園内の園舎が全体の52.1%、園舎外が41.6%、園外が6.3%でした。
①園舎内では保育室の事故が最も多く、特に3歳、4歳児に多かった。②室内運動場と遊戯室は全体の9.1%で、5歳、6歳児に多かった。③廊下、玄関は8.1%で、3歳、4歳児に多かった。④便所は2.7%で、3歳児に多かった。⑤園外では道路、公園が全体の4.4%で、5歳、6歳児に多かった。

2)遊具による事故
遊具では滑り台が全体の18.2%で、3歳、4歳児に多く、次いで鉄棒が13.1%で5歳児に多く、3歳児では砂場、ブランコ、ジャングルジムが多かったです。

3)子どもの安全教育
子どもの事故の防止には環境整備と子どもへの安全指導が重要です。

4)家庭との協働による安全習慣の醸成
家庭や近所の遊園地でも危険な場所があるかもしれません。外で遊ぶなということでは
ありません。安全に遊べる環境を作り、お子さんが危険を回避できる身体の訓練が必要となります。身体を動かさないお子さんに事故が多いようです。

 
4.ワクチンで予防できる病気(Vaccine Preventable Disease:VPD)

新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行があって、感染症への対応の難しさを経験しました。ウイルスは変異して現れてきて、診断や治療が困難になります。細菌感染症もなくなることはなく、時々、集団感染を起こします。これまでコロナ感染やインフルエンザに私達が実施してきた感染対策(マスク、うがい、手洗い、感染源からの隔離等)と可能であればワクチンで予防しましょう。
 
1)ワクチンの意味
ワクチンはその作用、副作用が科学的に検討され、国が接種を認めたものです。集団生活の中で多くの人がワクチンを受けていると、その病気を防ぐことができます。ワクチンが接種できなると病気が増えて死亡につながることがあります。
令和7年5月14日の岩手日報によると、米国厚生長官が麻疹ワクチンについて根拠が乏しい批判をしたところから、接種率が低下して麻疹の罹患が昨年の3倍に増加したと報告されました。
我が国の予防接種推進専門協議会が麻疹、風疹を予防するMR(麻疹・風疹)ワクチンの定期接種を受けた子どもの割合が低下していると、接種の呼びかけを始めました。新型コロナウイルス感染症の流行に伴って受診や接種を控えるようになったためと考えられています。MRワクチンは1歳と小学校入学前の1年間に2回受けなければなりません。
医療看護系大学や専門学校では麻疹、風疹の抗体価が低値であればMRワクチンが接種され、外国で滞在する場合、MRワクチンを受けていなければ入国が許可されないこともあります。
最近、我が国で百日咳が増加しています。乳幼児に百日咳を含んだ5種混合ワクチンで予防されています。12歳にDTを接種していますが、この年齢になると百日咳の抗体価が低下していて、百日咳に罹患して、抗体価が低い学童や成人に感染したためです。
 
2)ワクチンの種類
ワクチンには予防接種法で定められている「定期接種」とそれ以外の「任意接種」があります。下線のあるものは生ワクチンで、BCG(結核)は1回の接種、MR(麻疹、風疹)、水痘、流行性耳下腺炎は2回、ロタウイルスは2回もしくは3回の接種です。それ以外の不活化ワクチンは3回以上の接種です。次回までの間隔や別のワクチンとの間隔が決められていますので、お問い合わせ下さい。ロタウイルスは生後6週から1回目を始めるように、その効果や副作用に合わせて接種時期が設定されています。正しい知識を持って決められた年齢に決められた回数を受けましょう。

定期接種ワクチン:5種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)、BCG、MR(麻疹、風疹)、日本脳炎、ヒブ(Hib:ヘモフィウルスインフルエンザ菌b型)、小児用肺炎球菌、ヒトパピローマウイルス(HPV:子宮頸癌及びHPV関連疾患)水痘(みずぼうそう)、B型肝炎

任意接種ワクチン:ロタウイルス、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、インフルエンザ

 
5.乳幼児のうつる病気(感染症)といつまで休ませるかの目安

1)インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症における療養期間(出席停止期間)
令和5年9月28日付けで盛岡市医師会から「インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症における療養期間(出席停止期間)について」という通知が届いており、一部変更して掲載しました。受診して担当医にご相談下さい。

 
療養期間(出席停止期間)一覧 (※潜伏期:国立感染症研究所HP参考)

感染症 ※潜伏期間 登園基準
麻疹(はしか) 8~12日 解熱した後3日を経過するまで
水痘(水ぼうそう) 14~16日 すべての発疹がかさぶたになるまで
流行性耳下腺炎 16~18日 耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで
風疹(三日はしか) 16~18日 発疹が消失するまで
百日咳 7~10日 特有の咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで
インフルエンザ 平均2日 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで
流行性角結膜炎 2~14日 医師において感染の恐れがないと認められるまで
急性出血性結膜炎 1~3日 医師において感染の恐れがないと認められるまで
咽頭結膜熱(プール熱) 2~14日 発熱、咽頭炎、結膜炎などの主症状が消退した後2日を経過するまで
腸管出血性大腸菌感染症 10時間~6日 医師において感染の恐れがないと認められるまで症状が始まり、抗菌薬による治療が終了し、連続2回の検便によって菌陰性が確認されたもの
参考資料:学校において予防すべき感染症の解説 文部科学省(平成30年3月版)
新型コロナウイルス感染症 2~7日 発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで