園医から
※子どもたちの健やかな成長を願って!
2023年4月・5月合併号
赤坂 徹
Ⅰ.聖パウロ幼稚園へ入園おめでとうございます!
参考資料:幼稚園保健2014、小児科臨床 64巻増刊号
2014 日本小児医事出版社
1.保育所・幼稚園・認定こども園
乳幼児が通所する施設には保育所・幼稚園・認定こども園があり、保育所は厚生労働省が、幼稚園は文部科学省が、認定こども園は総務省がそれぞれ監督官庁となっています。保育所と認定こども園は0歳から小学校入学前までの乳幼児を対象としているのに対して、幼稚園は満3歳から小学校就学の始期に達するまでの幼児が対象とされています。
聖パウロ幼稚園を選んでいただいてありがとうございます。
2.幼稚園の園医のお仕事
幼稚園は教育基本法、学校教育法、学校保健安全法に規定される施設です。学校安全法で学校医は「学校保健計画の策定」「学校安全計画の策定」「健康相談」「健康診断」「感染の予防」を仕事としています。
1)学校保健計画の策定、学校安全計画の策定と実施
保健計画は定期健康診断のみならず、季節ごとに予想される感染症や健康管理について指導しています。安全計画は園内の施設の点検や管理、子どもへの教育、指導の計画です。
2)健康相談
保護者からの健康相談を受けています。聖パウロ幼稚園では園医(小児科医、理事長)により「子どもの心と身体の相談」として、6月16日(金)、7月11日(火)、9月5日(火)、10月6日(金)、11月10日(金)、2月9日(金)に開催されます。子育てについてご相談がありましたら、幼稚園職員を通してご予約下さい。聖パウロ幼稚園のホームページに「園医だより」で健康問題について解説しております。ご覧いただければ幸いです。
3)健康診断
入園時健康診断(入園健診)は必須ではありません。出生時から入園までの発育・発達、予防接種歴・疾患歴、アレルギー歴(食物アレルギー、動物アレルギー)、生活習慣について、保護者に健康調査票に記入していただいております。
定期健康診断は毎年1回、6月30日までに行うとされていますが、聖パウロ幼稚園では令和5年は5月2日(火)に予定されています。
①身体発育の評価②脊柱、胸郭、四肢等の骨格系の評価③皮膚の状態の評価④呼吸、循環系の評価⑤言語発達、コミュニケーション力の評価⑥眼、耳鼻咽喉、・歯口腔の評価(各科医師、歯科医師に委ねる)について診察します。
4)感染症の予防
感染拡大防止のために出席停止と臨時休業を決定するのは幼稚園の管理者である園長で
すが、園医は助言する立場にあります。発熱、発疹、下痢、嘔吐など感染を疑われる場合はかかりつけ医を受診して、その結果を幼稚園にもお知らせ下さい。
Ⅱ.新しい環境に慣れましょう
1.新入園や進級したお子さんは新しい環境に慣れるために疲れてくるのがこの時期です。
のんびり家庭で過ごしていたのが、朝起きて朝食を食べて登園の準備をするというような枠組みが造られてきます。朝起きられるように十分な睡眠時間を確保するために、年齢に応じた就寝時刻が決められてきます。スケジュールに乗って生活することは生活リズムを作るため重要です。幼稚園ではお友達や先生と楽しく過ごすことができますが、それに慣れるまでちょっと時間がかかることをご理解いただいて、焦らず温かく見守っていただきたいと思います。
2.子どもの事故は5月に注意する
日本スポーツ振興センターは幼稚園や保育園での事故が5月に増えると報告しました。新しい環境に慣れ、暖かくなって活発になったことが原因と考えられているようです。事故が起こった場所や原因を明らかにして、それに対処しましょう。
1)傷害の発生場所
園内の園舎が全体の52.1%、園舎外が41.6%、園外が6.3%でした。
①園舎内では保育室の事故が最も多く、特に3歳、4歳児に多かった。②室内運動場と遊戯室は全体の9.1%で、5歳、6歳児に多かった。③廊下、玄関は8.1%で、3歳、4歳児に多かった。④便所は2.7%で、3歳児に多かった。⑤園外では道路、公園が全体の4.4%で、5歳、6歳児に多かった。
2)遊具による事故
遊具では滑り台が全体の18.2%で、3歳、4歳児に多く、次いで鉄棒が13.1%で5歳児に多かった。3歳児では砂場、ブランコ、ジャングルジムが多かった。
3)子どもの安全教育
子どもの事故の防止には環境整備と子どもへの安全指導が重要である。
4)家庭との協働による安全習慣の醸成
家庭や近所の遊園地でも危険な場所があるかもしれない。外で遊ぶなということでは
ない。安全に遊べる環境作りと、お子さんが危険を回避できる身体の訓練が必要である。身体を動かさないお子さんに事故が多いようである。これを簡潔に記されたパンフレットが開発されており、日本子ども政策研究推進機構のホームページから無料でダウンロードできる。
Ⅲ.麻疹(はしか)・風疹ワクチンの接種率低下に注意
予防接種推進専門協議会が麻疹、風疹を予防するMRワクチンの定期接種を受けた子どもの割合が低下していると、接種の呼びかけを始めました。新型コロナウイルス感染症の流行に伴って受診や接種を控えるようになったためと考えられています。MRワクチンは1歳と小学校入学前の1年間に2回受けなければなりません。医療看護系大学や専門学校では麻疹、風疹の抗体価が低値であればMRワクチンが接種され、外国で滞在する場合、MRワクチンを受けていなければ入国が許可されないこともあります。